フットボール指導者として監督という役割を取り組むにあたり、チームをどのようにまとめ、運営するかということに全く知識がなくゼロから手探りで模索してきました。
監督キャリアをスタートして3年が経つ頃、チームマネジメントについて整理をして自分なりに意識するようになったことがありました。自分なりの心得として大切にしているものでもあります。
2017年、フウガドールすみだバッファローズを率いて、第23回全日本フットサル選手権全国大会ベスト8となりました。トップカテゴリーから数えて5部にあたる東京都1部リーグ所属ながら快挙と言える結果を残せました。
また、翌年2018年も2年連続全国大会出場を果たしベスト16となることができました。
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この結果を生み出せたのは、選手の努力という土台を元に選手の良さを最大限引き出すために自身で整理したチームマネジメント方法が機能したからなのではないかと考えています。
少しでも読者の皆さんのヒントになればと思い、今回はその内容を公開させてもらいます。
平等
チームで抱えている選手たちは「平等」であるべきです。
年齢、実績、性格は個別性がありますが、○○だから偉いとか△△だから劣ってるという固定概念は捨てるべきです。
平等でなくなるのは実力の差で生まれた”出場時間”だけではないでしょうか。
だからこそチームにおける運営ルールなども全員が平等に対応するべきででしょう。
自身は多くの失敗を繰り返し、平等の重要性を改めて感じています。
些細なことにも敏感に
実際にチームを運営している時に些細なことにも敏感に取り組んでいます。
例えば、TR中の紅白戦。チーム分けの際にこんなこと言っていませんか?
監督から
「ビブスチームは、A選手、B選手、C選手、D選手、E選手、F選手、G選手。ビブス無しチームはそれ以外の選手」
何が問題か。
それは、「それ以外の選手」という言葉。
名前が呼ばれなかった選手はどんな気持ちになるでしょう。「俺らはそれ以外かよ、、、」と選手によっては思うかもしれません。
他にも、紅白戦やTMにおけるセット分け。
常に1stセットから呼んでいませんか?もちろん敢えて呼んでいるのであれば監督の意図があるので問題はないかと思います。
ただ、セットは決まっていても呼ぶ順番を変えたり、3rdセットから呼ぶなどして、平等性を保つことも大切です。
「そんなところまで気にしないでしょ。」と思うことに案外選手は敏感だったりするものです。
うまく平等性を保つと選手の競争意識などにも刺激を与えることができます。
距離感
選手との距離感は重要です。平等性を保つ意味で個人的な誘いに関しては断ることが多いです。
例えば、
練習後にA選手とB選手がご飯を食べるということになり、そこに誘われたとする。
こういう誘いはありがたいですが、特にオフシーズン、インシーズン序盤のタイミングでは控えるようにしています。
なぜか。
彼らからしたら何でもないご飯の誘いかもしれません。
しかし、A選手、B選手のポジション争いをしている選手が監督と二人がご飯を食べたことを知ったらどんな心理になるでしょうか。ましてや彼らがプレー時間を長く確保されている選手だったらどうでしょう。
A選手とB選手だけ監督と共有する時間が多いというのは平等性に欠けるわけです。
オフシーズン、インシーズン序盤ほどまだ人間関係が構築されていない時期なので様々な局面でナーバスと言えます。
もちろんプライベートな時間なので全て当てはまるわけではありませんが、意識することは大切だと思います。
「平等」に選手を見れることがチームマネジメントの基礎になるでしょう。
対話
チームを運営する中で、選手とコミュニケーションを取ることがあると思います。
現代では情報発信の機能が多種多様になり、発展してきている時代です。
特にメール、LINE、SNSなどスマホなどの画面上でコミュニケーションが取ることが日常になっていることでしょう。
だからこそ、大切なのは「対話」です。文字には感情や表情は含まれません。
選手が感じていること、伝えたいことなどは対話の中で拾っていくことで発信側と受信側のエラーを最小限にすることができます。
自分が何かを選手に伝えたい時はミーディングを開くことがあります。
LINEで発信しても意味は伝わると思いますが、その真意までは伝えることはできません。
自身の言葉、間合い、表情で伝えることを習慣づけることが重要だと認識しています。
雰囲気
良いチームは、良い「雰囲気」である。
良い雰囲気という抽象的な言葉ですが、個人的には、「目的意識が明確で活気(笑顔)がある状態。」と考えています。
ではそれを生み出す要素はどんなことがあるのでしょうか。
アウトプッター
チームに一人はいる俗に言う”熱い奴”。
自分の意思や感情をしっかり表現でき、且つ建設的に話し合えるタイプ。
外に発信していく力があることから勝手に”アウトプッター“と呼んでいます。
そういった選手をどのようにマネジメントするかで雰囲気というものをコントロールできると思います。
具体的には、
・ミーティング時に質問したり、話を振る。
→緊張感を与えたり、和ませたり、その時期によって引き出したい効果を変える。
・ウォーミングアップでその選手が得意とする要素を多めに入れる
→気持ちが高まり、楽しくなるとよりアウトプットは多くなる。
・ウォーミングアップでグループで行うFUN的要素を取り入れる。
→周りを巻き込む。アウトプットを派生させる。
・敢えて外から見させる時間を創る。
→俯瞰したところから見ることでストレスフリーとなり、更にアウトプットが活性化する。
これはどのチームでも同様の効果を期待できると思います。
その選手に頼るということではなく、アウトプッターが影響を及ぼし、さらにアウトプッターを増やすことで属人的にならず、それがチームの色となっていくと考えています。
良い雰囲気を創り出すのは環境ではなく、自分たち自身という考えから成り立っています。
選手権で全国出場を決める一戦があるとすると嫌でも気持ちは高まり、全員が声を出し良い雰囲気にしようとします。
それがオフシーズンのトレーニングでも同様の雰囲気でできるかどうかが重要なわけです。
アウトプッターは一種の特殊能力なので身につけるものではないように思いますが、意識的に指導者がコントロールすることで派生していくものであると捉えています。
試合に出られない選手
公式戦があれば当然競争があります。それにより試合に出る選手、出られない選手に分かれることもあるでしょう。
チームの雰囲気を生み出すのは、そういったときの”試合に出られない選手“たちです。
試合に出られない選手たちが、チームのためにできることを全力で取り組む姿勢を見せたとき周りの選手、スタッフはどのように感じるでしょう。
おそらく「やってやる」感が増すと思います。それだけ、試合に出られない選手たちの影響は大きいと捉えています。
もちろんそれは試合当日だけでなく、シーズン中も同様です。
普段試合に出られていない選手が日頃のトレーニングから必死に取り組んでいたらチームにどのような影響があるでしょうか。
確実に良い雰囲気が高まると考えています。底上げとはまさにこの状況だと思います。
だからこそ、平等性を保った中で、試合に出られない選手への関わりやコミュニケーションを増やす必要があります。
試合に出るために、そしてチームの雰囲気を活性化させるために、重要な選手たちであることは間違いありません。
心理
チームでマネジメントする対象は機械ではなく、人間です。よって選手には感情があります。
その「心理」面を理解できずとも把握した中で管理していくことが重要です。
つまり指導者側も人間であるので機械的になってはいけません。
選手は十人十色でそれに対応する1つの正解がないので、いかに柔軟に対応するかが求められます。
逆境をポジティブに
シーズンを通せば必ず逆境となる場面が訪れる。
怪我人が多発する、練習に人数が集まらない、GKがいない、連敗する、、、。
様々なことがありますが、しかしそれをいかにポジティブな要素を組み合わせ心理的に緩和するかがとても重要です。
逆境に立たされる時は必ずしも全てがネガティブかというとそうことでもありません。いかにポジティブな要素を見つけるかです。
例えば、
・怪我人が多発 = 日頃試合に出れていない選手にはチャンスがくる
・練習に人数が集まらない = 個人技術、個人戦術、グループ戦術に特化できる
・GKがいない = パワープレーの攻撃にに特化できる。
・連敗する = 課題を突きつけられている。改善すれば成長となる。
他にも様々な逆境があり、それをどうポジティブに切り替えるかが重要だと思っています。
成果と課題のコントロール
トレーニングを積みかせてきた成果、逆にずっと付き纏う課題があるはずです。
その成果と課題をどのように選手に提示して意識させるかもチームマネジメントでは必要な要素だと考えています。
いつも「君たちは成長している。トレーニングの成果を出している。」と言い続けてくる指導者、また逆に「君たちはいつも○○な課題がある。」と言い続けてくる指導者がいる。
この二者の印象は選手からしたらどのように写るのでしょうか。
成果と課題の両方にアプローチすることは大切です。しかし、そのバランスと時期を抑えることが必要です。
個人的には、課題と成果に対して評価する割合を以下のように整理しています。
【評価する割合】
プレシーズン ・・・ 課題 > 成果
インシーズン序盤 ・・・ 課題 = 成果
インシーズン終盤 ・・・ 課題 < 成果
プレシーズンはチームの課題に対して多岐にわたり触れていく時間です。
選手としては、成果を評価される時間が少なくストレスも感じる時期かもしれません。しかし、長いシーズンにおいてしっかり課題に関してコミットすることが重要だと考えています。
インシーズン序盤は、公式戦がコンスタントに訪れます。課題と成果のバランスを取るようにしています。成果を認め、チームのストロングを明確にしていきます。
それと並行して新たに生まれる課題と継続している課題を改善できるように最善を尽くします。
インシーズン終盤は、チームとしての完成期になっているはずです。極力ネガティブなことは避け、自分たちのストロングを全面的に押し出した指導になります。
この時期はシーズンの中で一番重要な時期に入ってきます。昇格争い、残留争い、選手権など今で以上に負けられない戦いになります。
だからこそ、チームをポジティブにマネジメントすることが必要になってくるわけです。ネガティブを避け、良さを認め、ここまでの成果を認識させて運営することを意識しています。
シーズンの時期によって、選手の心理面を考慮して課題と成果をコントロールして評価することで、ピークを生み出すことに寄与すると考えています。
振る舞い
選手としての「振る舞い」は、クラブの印象、チームの印象、選手の印象に紐付きます。
その振る舞いを意識付けすることでチームを良い方向に傾けることも可能になると考えています。
クラブ方針として様々ありますが、ここでは個人的に選手に落としていることを紹介します。
試合に負けた時に本性が出る
いくら良い雰囲気でチームを運営していても、時には悪い雰囲気になることもあります。
それが顕著に現れる時が”試合に負けた時”です。
試合に負けた時にそのチームの本性が現れると思っています。
言い訳や愚痴を吐くのか、それとも次を見据えて前を向くことができるのか。これをうまくコントロールしなければ良いマネジメントはできません。
負けた時に苛立ちから選手として相応しくない態度を取ってしまうこともあるでしょう。
しかし、そこをセルフコントロールすることも選手として試されている部分だと訴えるようにしています。
サッカー、フットサルの日本代表選手が負けた後にどのような振る舞いをしているか。ファンに挨拶をして、記者会見を毅然と行う。悔しさを押し殺して対応するわけです。
その悔しさを味わいたくなければ必死にトレーニングに励み、次は勝つしかないというマインドをセットするのみです。
また、負けた時ほど真摯に結果を受け止めさせること。
そして、その日に試合内容を振り返ることはあまりさせないようにしています。当日は冷静さを失って、話し合いがヒートアップすることもあります。
1日経って、冷静さを取り戻してから建設的に振り返る時間を設けるようにしています。
何を見せるか
試合に負けた時によく「胸を張れ」と伝えています。それは自分たちの結果に自信を持てということではありません。
勝ったチームの選手、スタッフ、サポーターを見させたい、という意図があります。
相手チームの喜ぶ姿は何よりも見たくないものでしょう。悔しさが込み上げてくることは間違いないので、すぐにでもその場を離れたいのが選手心理だと思います。
しかし、それを敢えて見て欲しいわけです。人間の記憶は時間と共に薄れます。その薄れる記憶の中に衝撃的な印象を植え付けることで脳裏に残るものもあります。
だからこそ、その屈辱的な映像を見るために胸を張らせたいわけです。相手チームだけでなく、自チームのサポーターの悔しい表情、応援してくれた声などに耳を傾けること。
これが数日経つと大きなモチベーションに変わるはずです。もうあの光景は見たくないと。絶対勝ち続けたいと。
そうやって負けた時に選手、チームのモチベーションを高める伏線を張るようにしています。
何より自身が一番これを実践しておりプラスに働いているので推奨しています。
東京都リーグの優勝を逃した時も、選手権で負けた時も、いつも相手チーム、サポーターを見てきました。あの悔しさは今でも思い出します。
それが今の自分のモチベーションとなっていることは間違いありません。
最後に
チームを構成するのは選手であり、スタッフです。
選手、スタッフを含めてどのようにマネジメントするかは監督に求められる重要なスキルだと認識しています。
コート内の指導力がいくら高かったとしてもコート外のマネジメントが疎かだと目標としている結果を掴み取ることが難しくなるでしょう。
再度自身が整理している5項目を確認したいと思います。
1.平等 2.対話 3.雰囲気 4.心理 5.振る舞い
これは正解でも何でもなく、自身が過去の経験から効果を感じている5項目であるだけです。
今後も変わる可能性がありますが、これよりも効果的なものはいくらでもあると思います。それを見つけるため日々探求を進めていきたいですね。
それでは最後は、あの著名人の言葉で締めさせていただきます。
必要なのは強力なチームだ。
ビル・ゲイツ
以上、お読みいただきありがとうございました。
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