日本において20年ほど前からフットサルという競技が徐々にフットボール界に現れ始めたと認識している。
特に育成年代においてフットサルをトレーニングすることはサッカーにもおいても効果的だとされ、フットサルのトレーニングを導入するクラブが増えてきた。
サッカーに繋がる技術・戦術をフットサルで獲得する。
そんなことをよく耳にするようになってきた。
サッカー大国であるブラジル、スペインはフットボール選手としてのスタートはフットサルであるとい言われている。ネイマール、ロナウジーニョ、オスカル、ダレッサンドロ、ジダンなど世界の有名選手たちはフットサルからキャリアをスタートさせた。日本代表原口元気選手は、小学生のフットサル大会の最高峰であるバーモントカップに出場し見事優勝したことは有名な話である。
サッカー上達のカギがフットサルにあるのではないかと考えられるようになってきた。
ではなぜフットサルはサッカーに繋がるものになるのか。そして、サッカーとフットサルの違いはどういったものなのかお伝えしていきたい。
サッカーとフットサルの違い
競技規則
そもそもサッカーとフットサルは似て非なるものである。
大は小を兼ねると言いますが、決してフットサルをミニサッカーと表現することで全て網羅されるわけではありません。
競技自体が異なるので、違うスポーツであるという認識が正しいように感じます。
具体的に競技規則を比較してみることにする。
ハード面
ハード面 | サッカー | フットサル |
コートサイズ | 68m × 105m | 20m × 40m |
ゴールサイズ | 2.44m × 7.32m | 2m × 3m |
競技人数 | 11人 vs 11人 | 5人 vs 5人 |
競技時間 | 45分ハーフ 90分ランニング | 20分ハーフ 40分プレイング |
登録人数 | 18人 〜 23名 ※大会規定により異なる | 14名 |
交代人数 | 3人 〜 6名 ※大会規定により異なる | 制限なし |
審判 | 主審+副審2名+第4審判 | 主審+副審2名+第4審判 |
ボール | サッカー5号球 | フットサルボール4号球 ※ローバウンドボール |
サーフェイス | 屋外:天然芝 | 屋内:フローリング |
ソフト面(ルール)
ソフト面 | サッカー | フットサル |
反則数 | 反則数はカウントしない | 反則数が6つになると第2PKが与えられる |
ボールアウト | サイドラインはスローイン ゴールラインはゴールキック | サイドラインはキックイン ゴールラインはゴールクリアランス(手で投げる) |
4秒ルール | なし | キックイン、フリーキック、ゴールクリアランス、GK保持の際は、4秒以内にプレーしなければならない |
GKへのバックパス | 「意図的に」ボールを「蹴った」場合もしくはスローインのボールをGKへと戻した場合に、GKがそのボールを手で扱うことはできない | GKがボールをプレーした後、相手競技者がプレー、または触れていないにもかかわらずピッチの自分自身のハーフ内で、味方競技者によって意図的にGKに向けてプレーされたボールに再び触れることはできない |
オフサイド | あり | なし |
タイムアウト | なし | 前後半で1回ずつ取ることができる |
退場 | 退場者が出ると1人少ない状況で試合終了まで行う | 退場者が出るとそのチームが失点するか、2分経過すると人数を戻すことができる |
細かく見ていくと他にも違いは出てきますが、概ね以上のことがサッカーとフットサルで異なる部分となります。
多くの異なる部分があることからスポーツとして違うものであることが理解できると思います。
競技環境
実際の競技環境としての違いも見ていきたいと思います。
日本フットボール界がどのような構想になっているのでしょうか。
日本サッカーのリーグ構想
プロリーグに当たるJリーグは3部制となっており、それ以下に関してはアマチュアリーグとなる。
階層としてはJ1から最下部まで入れると7階層となっている。
関東、関西など競技人口が多い地域だと都道府県リーグも3部〜4部ほどに構成されていることからJ1から数えると10部までのピラミッド構想となっている。
部 | リーグ名 | 参加クラブ数 |
プロ1部 | J1リーグ | 18 |
プロ2部 | J2リーグ | 22 |
プロ3部 | J3リーグ | 15 |
アマチュア1部 | 日本フットボールリーグ(JFL) | 16 |
アマチュア2部 | 地域リーグ1部(9地域) | 80 |
アマチュア3部 | 地域リーグ2部(11地域:北海道5地域) | 59 |
アマチュア4部以下 | 都道府県リーグ | ー |
日本フットサルのリーグ構想
フットサルはリーグとしてプロ化はしていない。
日本フットサルリーグ(Fリーグ)に加盟しているクラブで選手をプロ化して契約しているクラブもあるが、全クラブではなくほぼ選手はアマチュアとなる。
FリーグはF1、F2の2部構成となっており、各地域リーグ(関東りーぐは2部制)、都道府県リーグとなっている。
F1から最下部まで入れると4階層となり、サッカーよりは階層が薄くなっている。
都道府県リーグまで入れるとF1から数えると5部〜9部編成となる。
部 | リーグ名 | 参加クラブ数 |
アマチュア1部 | F1リーグ | 12 |
アマチュア2部 | F2リーグ | 8 |
アマチュア3部 | 地域リーグ1部(9地域) | 72 |
アマチュア4部 | 地域リーグ2部(6地域:7リーグ 東北2部2リーグ) | 58 |
アマチュア5部 | 都道府県リーグ | ー |
競技環境を比較しても、サッカーとフットサルでは大きく異なることがわかる。
当然スポーツが違えば競技環境も異なるということである。
ご存知のとおり、サッカーは世界的にもメジャーなスポーツであり、フットサルはまだまだ発展途上であることは間違いありません。
だからこそ、フットサルのためにフットサルに取り組むことが希少となり、サッカーの育成ツールとして活用されることが多くなってきたのでしょう。
今後のフットサル界の発展次第では、この構想は変わることもあるかと思います。
しかし、当面フットサルを専門競技として育成から学びフットサル選手として進むことは希少であり、サッカー選手の育成ツールとして活用される流れは継続されると予想されます。
しかし、そのような立ち位置であるフットサルですが、学ぶことで大きな効果を得ることも事実です。
では実際どのような効果を得ることができるか考えていきましょう。
フットサルから得られる効果
技術
まずは、技術という視点から考えていきましょう。
フットサルはサッカーの9分の1のスペースで行うスポーツです。
さらに競技者も5人とサッカーよりも少ないです。
よって、当然ボールに触れる機会が増えます。ボールに触れるということは技術的に向上する機会が増すということでもあります。
技術はボールに触れて初めて向上するものであり、ボールに触れずして向上できる技術もありますが、リアリティに欠けてしまいます。
ボールに触れる機会が増えることは自然と技術向上に適しているということです。
では具体的にどのような技術に影響があるのでしょうか。
ドリブル
競技特性上、サッカーより狭いスペース、少ない人数で行うことで1v1の状況は多くなります。
自然と相手と対峙する時間が多くなり、それに対する解決方法が必要となります。
自身でボールを保持するための運ぶドリブル、相手のDFラインを越えていく突破のドリブルなど自然と経験値が増え、習得できる可能性が高くなります。
フットサルは、よくフェイントやテクニックが向上する印象を持つ方がいますが、それは競技特性から自然とその技術を発揮する機会が多くなるからなのだと理解しています。
一人一人がボールに触れる機会が増えるからこそ、自らボールを扱う時間が多くなるということである。またフットサルはローバウンドボールを使用していることで、サッカーボールより扱いが容易になり足からボールが離れることが少なくなります。
よってドリブル技術に与える影響は非常に大きいと考えています。
キック
ローバウンドボールを蹴るこということは育成年代においてストレスも伴う。
遠くにボールを蹴りたい!
そんな子供としての本能を遮ることになる。
なぜならフットサルボール(ローバウンドボール)はサッカーボールより遠くに飛ばすことが困難になるからです。
ボールが重いから?と思われがちですが、実は重量は同じなんです。
でも、感覚としては若干重たく感じると思います。
だからこそボールの中心をしっかり捉えるということに意識が向くことでもあります。
ボールの中心を捉えないと速いパス、シュートを放つことは難しくなります。
フットサルで多用されるトゥーキック(つま先を利用したキック)はまさにボールの中心を捉えないと効果的にボールが飛びません。
よって、パス、シュートを含めフットサルに取り組むことで、ボールの中心を捉える感覚を養うことになると考えています。
もちろんこれ以外にもボールを止める頻度が増えるのでコントロール(トラップ)などにも好影響はあるかと思いますが、技術に与える効果として大きいのはドリブルとキックだと感じています。
戦術
フットサルは攻守に連続性があります。つまりフットサルは瞬時に状況が変わり、「いつ」、「どこで」、「どのように」技術を発揮するかを求められるわけです。
そもそも戦術とは何かを言葉の意味から説いてみる。
ある目的を達成するための具体的な方法・手段。
-引用元:コトバンク https://kotobank.jp/word/戦術-88365
目的達成するための手段が技術であり、その技術を具体的にどうやって使用するかの集合体が戦術であると捉えている。
目的とは「ゴールを奪う」、「ゴールを守る」ことであるが、それをコートのエリアや状況に応じて6つの目標に分かれる。
これは別の機会があれば深くお話しできればと思います。
よって、フットサルは目的が変わらないが、目標が瞬時に変わっていくスポーツであり、その目標に向けて戦術を駆使していく必要がある。
では具体的にどのような戦術に影響があるのでしょうか。
サポート
サッカーよりもスペースが限られていることにより、ボールにプレスがかかりやすい状況となる。
よって、ボール保持者のサポートは常に高い水準で求められることになる。
いつ、どこに、どのようなサポートが必要かをあらゆるシチュエーションから経験し学ぶことが可能となり、個人戦術のベースとなる部分である。
またそれがサッカーよりも高頻度に求められることで、状況を認知する力も必要となる。
特に、相手から離れること、味方の距離を縮めること、ディフェンスライン間に侵入することの3つはフットサルに取り組むことで得ることができる効果ではないだろうか。
この辺りの詳細も機会があれば今度お伝えしたいと思います。
撤退
サッカーより人数が少ないということは一人一人に対する責任が大きいということ。
相手が前進してきたときに、撤退を怠ると4v3、3v2がすぐに起きてしまう。
これは40m × 20mという狭いスペースにおいては致命的な状況である。それを起こさないために、相手が前進してきた際はボールラインまで撤退することが求められる。
フットサルに取り組んでいれば自然と学べる守備の個人戦術である。
その他
アジリティ
コートサイズ、攻守の連続性、相手との距離感の近さ、などからアジリティ能力が求められます。
アジリティの意味とは以下のとおりである。
機敏さ。軽快さ。敏捷さ。
– 引用元 Weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/アジリティ
長時間走り続けるよりも、短時間に素早く走ることが重要なスポーツです。
フットサルは交代自由であることから休憩中にリカバリーすることが可能となります。よって、短時間でいかに強度高くプレーできるかということになる。
フットサルに取り組むことは、スプリント、ステップワークなど必然と経験ができることから、様々な動きとして習得できる可能性が高まる。
インテリジェンス
言葉にすると難しいもの。
しかし、プレーを行うということは、アクシオンタクティカ(戦術的行動)を回すことである。
アクシオンタクティカとは、
「 認知 → 決断 → 実行 → フィードバック 」 のサイクルである。
状況を認知して、自分のプレーを選択し何をするか決断する。そして、その選んだプレーを実際に実行する。結果どうなったかを自身または他者から振り返り記憶する。
このサイクルが高速で回るのがフットサルだと思います。
これを何度も反復することで、自身で「観る・選ぶ・考える」といったことが活性化され、能動的な知性を養うことに繋がると考えています。
これをインテリジェンスと表現しています。
フットサルは知性を育てるスポーツであるとも言えるでしょう。
まとめ
- サッカーとフットサルは異なるスポーツである。
- フットサルはサッカーに繋がる要素を多く含んでいる。
- フットサルに取り組むことは技術、戦術など多用に得られる効果がある。
どうだったでしょうか?
ジュニアチームでご指導されているお父さんコーチの方々に少しでもフットサルの良さが伝われば幸いです。
自チームでフットサルトレーニングを導入していただいたり、また実際にサッカーとの違いをフットサルを観戦することで感じていただければと思います。
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